フライフィッシングの楽しみ方あれこれ ― 2010/05/05 12:36
・独り言
今さらフライフィッシングについて説明する必要もないと思いますが、簡単に言えば、鈎に鳥の羽や化学繊維を巻付け一見虫らしく見せて魚を釣る釣り方です。
一口で言えば、まあ味もそっけも無い表現になるのですが、これがどうして仲々奥が深くて、ついついのめり込んだら出口がわからなくなってしまって未だにどっぷりつかったままでいる人が多いというのは、やはりそれなりの理由がありまして、これも簡単に言ってしまえば「面白いから」と言うことにつきるでしょうか。 遊びをやるのにわざわざ理由をつけることもないのですが、部屋の電気を暗くして大の大人が独りぽつんとTVゲームでドラクエIIIに夢中になっていたりして、呪文が一つわかったなどとニャッと笑いながら翌日の昼頃赤い目をこすりながら起き出すのに比べれぱ、明日行く川と、ひょっとすると釣れてくれるかもしれないヤマメを頭に浮かべながら、ニヤニヤして毛鈎を巻き、翌朝に備えて早寝するのは健康的と世間では思うかもしれないけれど、でもどこか相通ずるところがあったりして、早い話、本人が楽しんでいる分には害は無いのですが、他人を巻き込むとなると話は別で、この記事を読んで又一人フライフィッシングに狂う人が生まれると思うと、どこかおそろしい、と思ったりするのです。
・やってみたいと思っている人へ
さてフライフィッシングはやりたいが、道具をどこで揃えたら良いかわからないし、それに釣る場所もわからない。 それより先に自分に出来るのだろうかなどと思いつつ釣りの本やアウトドアの雑誌などをめくっている人が多いのではないかと思います。 でも現在ではこれらの疑問について心配する必要はまったくありません。 第1に東北地方を流れるすべての川でフライフィッシングが出来るのです。 20年前ならいざ知らず今ではちょっと大きな町なら必ずフライの道具を扱っている店がありますし、大抵そんな店なら初めて行って何も買わなくとも、竿の振り方から始まって、毛鈎の巻き方まで教えてくれます。 何度目かには昨日釣れたポイントやヒットした毛鈎も教えてくれるはずです。 もしもそんなお店でなかったら、今後お付き合いするのは考えた方がよいと思います。 お店の場所はNTTのタウンページをめくればすぐにわかります。
又、フライフィッシングを専門にしているお店なら年にl度位は、お客の親睦をかねてフライフィッシング・スクールを開校したり、シーズンオフにフライタイイング・スクールを開いたりしています。 かえって地方には無いものとばかり決めつけて東京あたりにタックルを買いに出かけたり、あるいは通信販売で求めたりすると、売る方では悪意はないのでしょうが正確にこちらに適した物を把握してもらえず、知らずにちぐはぐな物を手にして気付かないでいてしまうのです。
予算ですが、大体スキーの一セット位を考えておけば良いでしょう。 つまり安いのはそれなりのセットがありますが、最低4万円程度は見ておいた方がよいと思います。 どうせすぐ高いのが欲しくなるのだから初めからいいものを買った方がよいと思う人もあるでしょうが、やはりスキーと同じで、高い物程個性が強く出て初心者には使いづらいものです。 カタログまがいの雑誌の中で釣れた魚と共にさりげなく写真に写っているロッドを見て、ついつい憧れて入手したのは良いが、自分の実力では使いこなせず、その挙句に中古品として巷に流すことになります。
一シーズンか二シーズンもやれば自分の行く川の状態もわかりますし、現在使用している道具のどこが不満かもわかります。 初めのセットはいわば入学金と思ってください。
さて釣場のことですが、東北で一番大きい街といえば仙台ですが、この街からでさえわずか30分も車を走らせれば、フライフィッシングでヤマメもイワナも釣ることが出来るのです。 仕事が終わって残業のなかった日なら、日暮れ時、遅出の日なら朝9時までなど、日曜日を待たなくとも楽しめるのです。 もちろん毎日ベストの状況とは限りません。 良い日もあれは、駄目な日もあります。 でも回を重ねることでチャンスに恵まれます。 そして遠くに飛ばすより、できるだけポイントに近づいて正確に毛鈎を落とした方が、釣り易いことに気が付くでしょう。 Xヤードまでラインを飛ばせるようになるまではフィールドに出てはいけない、と惑わす様な書き方をしている入門書より、自然の方がずっと上手な先生なのだと気付くはずです。 実はこの辺りが見えてくると、東北地方に住んでて良かったなと思わず感激してしまうのです。
・ちょっと堅い話になりますが
鮎釣りでもへら鮒釣りでも、初めは一地方の釣りだったのが、長い年月と多くの人の努力で、試行錯誤を繰り返しポピュラーな釣りになる間に、ルールやマナーが生まれ現在に至っています。 ところがフライフィッシングに関しては若い連中が飛びついたせいもあるのですが、ルールやマナーが完成する経緯が十分に紹介されないで、道具と釣り方だけが外国から入ってきたような気がします。
例えばフライフィッシング発祥の地と呼ばれる英国のバッキンガム宮殿で、衛兵の交代が始まると行進の通り道にあたる道路は、人も車も通行止めになるのですが、その時出る看板は「私有地につき通行止め」と書いてあるのです。 つまり女王陛下の私有地をふだんはタクシーが走り人が行き来しているわけです。 むろん英国全土が王室の私有地ではなく、国有地だったり民間所有地だったりするのですが、これらの場所でもよほどのことが無い限り、自由に出人りさせてくれるのです。 私有地だから石一つまで待ち主の物であるという現実と、公共の物を汚してはいけないというしつけが、子供の頃になされている背景があればこそ、普段は自由に出入りできる状態を作り出しているのだと思うのです。 このモラルが確立していることが、ナショナルトラスト運動の成功に結び付くのではないかと思うのです。
フライフィッシングはこのような環境の中で完成してきたわけですから、絶対に自然を守らなければ、私有地の一部である川から締め出されてしまうのです。
フライフィッシングを学ぶ時に、ルールやマナーが完成する過程を知ることは、自然を守ることを知ることにつながるのです。 このことを十分に理解しておかないと、訳もわからず餌釣りを見下したり、的はずれのキャッチ&リリースを他人に強制したり、道具のブランドだけを競いあうガキの釣りに成り下がってしまうのです。
(自然倶楽部1988年5月号 42-43P)
今さらフライフィッシングについて説明する必要もないと思いますが、簡単に言えば、鈎に鳥の羽や化学繊維を巻付け一見虫らしく見せて魚を釣る釣り方です。
一口で言えば、まあ味もそっけも無い表現になるのですが、これがどうして仲々奥が深くて、ついついのめり込んだら出口がわからなくなってしまって未だにどっぷりつかったままでいる人が多いというのは、やはりそれなりの理由がありまして、これも簡単に言ってしまえば「面白いから」と言うことにつきるでしょうか。 遊びをやるのにわざわざ理由をつけることもないのですが、部屋の電気を暗くして大の大人が独りぽつんとTVゲームでドラクエIIIに夢中になっていたりして、呪文が一つわかったなどとニャッと笑いながら翌日の昼頃赤い目をこすりながら起き出すのに比べれぱ、明日行く川と、ひょっとすると釣れてくれるかもしれないヤマメを頭に浮かべながら、ニヤニヤして毛鈎を巻き、翌朝に備えて早寝するのは健康的と世間では思うかもしれないけれど、でもどこか相通ずるところがあったりして、早い話、本人が楽しんでいる分には害は無いのですが、他人を巻き込むとなると話は別で、この記事を読んで又一人フライフィッシングに狂う人が生まれると思うと、どこかおそろしい、と思ったりするのです。
・やってみたいと思っている人へ
さてフライフィッシングはやりたいが、道具をどこで揃えたら良いかわからないし、それに釣る場所もわからない。 それより先に自分に出来るのだろうかなどと思いつつ釣りの本やアウトドアの雑誌などをめくっている人が多いのではないかと思います。 でも現在ではこれらの疑問について心配する必要はまったくありません。 第1に東北地方を流れるすべての川でフライフィッシングが出来るのです。 20年前ならいざ知らず今ではちょっと大きな町なら必ずフライの道具を扱っている店がありますし、大抵そんな店なら初めて行って何も買わなくとも、竿の振り方から始まって、毛鈎の巻き方まで教えてくれます。 何度目かには昨日釣れたポイントやヒットした毛鈎も教えてくれるはずです。 もしもそんなお店でなかったら、今後お付き合いするのは考えた方がよいと思います。 お店の場所はNTTのタウンページをめくればすぐにわかります。
又、フライフィッシングを専門にしているお店なら年にl度位は、お客の親睦をかねてフライフィッシング・スクールを開校したり、シーズンオフにフライタイイング・スクールを開いたりしています。 かえって地方には無いものとばかり決めつけて東京あたりにタックルを買いに出かけたり、あるいは通信販売で求めたりすると、売る方では悪意はないのでしょうが正確にこちらに適した物を把握してもらえず、知らずにちぐはぐな物を手にして気付かないでいてしまうのです。
予算ですが、大体スキーの一セット位を考えておけば良いでしょう。 つまり安いのはそれなりのセットがありますが、最低4万円程度は見ておいた方がよいと思います。 どうせすぐ高いのが欲しくなるのだから初めからいいものを買った方がよいと思う人もあるでしょうが、やはりスキーと同じで、高い物程個性が強く出て初心者には使いづらいものです。 カタログまがいの雑誌の中で釣れた魚と共にさりげなく写真に写っているロッドを見て、ついつい憧れて入手したのは良いが、自分の実力では使いこなせず、その挙句に中古品として巷に流すことになります。
一シーズンか二シーズンもやれば自分の行く川の状態もわかりますし、現在使用している道具のどこが不満かもわかります。 初めのセットはいわば入学金と思ってください。
さて釣場のことですが、東北で一番大きい街といえば仙台ですが、この街からでさえわずか30分も車を走らせれば、フライフィッシングでヤマメもイワナも釣ることが出来るのです。 仕事が終わって残業のなかった日なら、日暮れ時、遅出の日なら朝9時までなど、日曜日を待たなくとも楽しめるのです。 もちろん毎日ベストの状況とは限りません。 良い日もあれは、駄目な日もあります。 でも回を重ねることでチャンスに恵まれます。 そして遠くに飛ばすより、できるだけポイントに近づいて正確に毛鈎を落とした方が、釣り易いことに気が付くでしょう。 Xヤードまでラインを飛ばせるようになるまではフィールドに出てはいけない、と惑わす様な書き方をしている入門書より、自然の方がずっと上手な先生なのだと気付くはずです。 実はこの辺りが見えてくると、東北地方に住んでて良かったなと思わず感激してしまうのです。
・ちょっと堅い話になりますが
鮎釣りでもへら鮒釣りでも、初めは一地方の釣りだったのが、長い年月と多くの人の努力で、試行錯誤を繰り返しポピュラーな釣りになる間に、ルールやマナーが生まれ現在に至っています。 ところがフライフィッシングに関しては若い連中が飛びついたせいもあるのですが、ルールやマナーが完成する経緯が十分に紹介されないで、道具と釣り方だけが外国から入ってきたような気がします。
例えばフライフィッシング発祥の地と呼ばれる英国のバッキンガム宮殿で、衛兵の交代が始まると行進の通り道にあたる道路は、人も車も通行止めになるのですが、その時出る看板は「私有地につき通行止め」と書いてあるのです。 つまり女王陛下の私有地をふだんはタクシーが走り人が行き来しているわけです。 むろん英国全土が王室の私有地ではなく、国有地だったり民間所有地だったりするのですが、これらの場所でもよほどのことが無い限り、自由に出人りさせてくれるのです。 私有地だから石一つまで待ち主の物であるという現実と、公共の物を汚してはいけないというしつけが、子供の頃になされている背景があればこそ、普段は自由に出入りできる状態を作り出しているのだと思うのです。 このモラルが確立していることが、ナショナルトラスト運動の成功に結び付くのではないかと思うのです。
フライフィッシングはこのような環境の中で完成してきたわけですから、絶対に自然を守らなければ、私有地の一部である川から締め出されてしまうのです。
フライフィッシングを学ぶ時に、ルールやマナーが完成する過程を知ることは、自然を守ることを知ることにつながるのです。 このことを十分に理解しておかないと、訳もわからず餌釣りを見下したり、的はずれのキャッチ&リリースを他人に強制したり、道具のブランドだけを競いあうガキの釣りに成り下がってしまうのです。
(自然倶楽部1988年5月号 42-43P)
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