英国やぶにらみ第13話 骨董の価格と価値観 ― 2010/04/22 22:17
ヨーロッパに出かけて誰でもが興味を持つものの一つに露天市場がある。 英国の首都ロンドンでもこの青空市場が各地にあり賑わっている。 これらの市場は、まずヒッピーやパンクの連中のもの。 多少インチキ臭い名画や似顔絵かきと絵葉書の写し書きに類する絵画、日用雑貨品と食品、そして骨董品を中心としたアンティックマーケットが主流といえる。
まず、ヒッピーやパンクの品々については、その手の人には興味があろうが、一般には用がない。 絵画のたぐいはアメリカ人向けで、日本人や地元の人々にはあまり必要ではない。 それに比べるとアンティックマーケットは、いつも地元の人をふくめて実に熱狂的でその上、おいそれと買わないのでごったがえす。
日本でも京都の東寺の市がよく知られているが、売られている商品を見るとロンドンの方が格段と種類が多いし楽しめる。 上物になると何万ポンドという宝石に始まって、キリとなるとまるでゴミ函から持ってきた様なマッチの空箱までがところ狭しと並べられる。
江戸落語の「道具屋」で売られているたぐいの物も揃っていて、故事来歴が東洋と西洋を置きかえただけなのも面自い。
つまり、骨董屋の親父に質問すると、事細かにクレオパトラの従者が使用していた、だちょうの羽根風扇や、ヘンリー3世の薬箱などが出てくる。 洋銀の製品ともなると、純度、製造年、製造地などが刻印されており、いつの時代のものかを判別出来る様になっているが、露天の親父の手にかかると、ひとつの灰皿が色々な人の所有品になったりして、時間のたつのが気がつかぬ程だ。
数10年前のものと思われる日本の深川製陶の皿などは庶民の骨董として珍重されていて、市場に必ず並べられている。 皿の絵などが適当にかすれていて、なんとなく時代を感じさせるものであれば25~30ポンドの値がつく。 戦前にはよく歳末になると近所の酒屋あたりでくれた徳利で、底に三河屋などと書いてあるものが100ポンドて売られていたのに驚いたりもする。
英国のトワイニング紅茶といえば、日本でもよく知られた銘柄で、商品の中で陶器製のポットに入っているものがある。 随分前の事だが、さる友人からこのポットを土産にと頂いた事があった。 貰ってみたもののたかが紅茶の入れ物であり、勿論紅茶も入っていない。 なんとも馬鹿にされた気持でしぶしぶ持ちかえった。
後日、当人からポットについて、実はあのポットはトワイニング社がある年ほとんど製造出来なかったために、骨董市場においてはトワイニングの限定ポットとして評価され、アンティーク価格が設定されており、普通のポットとちがうという事であった。 たかが紅茶ポットされど紅茶ポットという訳で、英国のもっている骨董にたいしての評価の目を知ったのである。
日本では古物商組合を中心として、業者間で取引するのが通常で、一般のひとがセリに参加出来ないのが普通であるが、英国ではこのセリを商売とした企業があり、誰でも入札に参加が可能である。 クリスティーやサザビーなどは世界中に知られる骨董のセリを連日行っている。
先日も、天皇陛下からウインザー公に昔贈呈された日本の飾りダンスが2億円あまりで落札されたが、これも個人で入札に参加した1アメリカ人が買ったものだ。
古物だから新品より安いと考えるとえらい目にあうのも西洋の骨董で、例えばハンフリー・ボガードが着用したレインコートとコロンボ警部のコートでは、それが同じバーバリーの物であっても中古価格と価値が異なる。 つまり、作られたレーンコートの数、デザインなどを勘案してオリジナリティーを探求した上で骨董としての価値の設定がおこなわれて行くのである。 勿論、全部の骨董がそうではないが、彼らの目ききには相当の知識を持つ人もいる程だ。
過日、英国の古いリールを頼まれて知人につてを求めた。 新品が100ポンドもせずに買えるものなので法外な骨童価格など眼中に無かった。 しばらくしてから返事が来て、品物は見つかったが、本当に買ってもよいのかとの確認を求められた。 なんと驚いたことに4500ポンド。 たった1個の中古リールがである。 さらに追いうちで3日以内に返事をという。 他にも買手が待っているとの事。 比べたくはないが国産車1台と同値ではと、やむなく引き下がった。(荒井利治)
Copyright (c) T.Arai, 1986. All rights reserved.
まず、ヒッピーやパンクの品々については、その手の人には興味があろうが、一般には用がない。 絵画のたぐいはアメリカ人向けで、日本人や地元の人々にはあまり必要ではない。 それに比べるとアンティックマーケットは、いつも地元の人をふくめて実に熱狂的でその上、おいそれと買わないのでごったがえす。
日本でも京都の東寺の市がよく知られているが、売られている商品を見るとロンドンの方が格段と種類が多いし楽しめる。 上物になると何万ポンドという宝石に始まって、キリとなるとまるでゴミ函から持ってきた様なマッチの空箱までがところ狭しと並べられる。
江戸落語の「道具屋」で売られているたぐいの物も揃っていて、故事来歴が東洋と西洋を置きかえただけなのも面自い。
つまり、骨董屋の親父に質問すると、事細かにクレオパトラの従者が使用していた、だちょうの羽根風扇や、ヘンリー3世の薬箱などが出てくる。 洋銀の製品ともなると、純度、製造年、製造地などが刻印されており、いつの時代のものかを判別出来る様になっているが、露天の親父の手にかかると、ひとつの灰皿が色々な人の所有品になったりして、時間のたつのが気がつかぬ程だ。
数10年前のものと思われる日本の深川製陶の皿などは庶民の骨董として珍重されていて、市場に必ず並べられている。 皿の絵などが適当にかすれていて、なんとなく時代を感じさせるものであれば25~30ポンドの値がつく。 戦前にはよく歳末になると近所の酒屋あたりでくれた徳利で、底に三河屋などと書いてあるものが100ポンドて売られていたのに驚いたりもする。
英国のトワイニング紅茶といえば、日本でもよく知られた銘柄で、商品の中で陶器製のポットに入っているものがある。 随分前の事だが、さる友人からこのポットを土産にと頂いた事があった。 貰ってみたもののたかが紅茶の入れ物であり、勿論紅茶も入っていない。 なんとも馬鹿にされた気持でしぶしぶ持ちかえった。
後日、当人からポットについて、実はあのポットはトワイニング社がある年ほとんど製造出来なかったために、骨董市場においてはトワイニングの限定ポットとして評価され、アンティーク価格が設定されており、普通のポットとちがうという事であった。 たかが紅茶ポットされど紅茶ポットという訳で、英国のもっている骨董にたいしての評価の目を知ったのである。
日本では古物商組合を中心として、業者間で取引するのが通常で、一般のひとがセリに参加出来ないのが普通であるが、英国ではこのセリを商売とした企業があり、誰でも入札に参加が可能である。 クリスティーやサザビーなどは世界中に知られる骨董のセリを連日行っている。
先日も、天皇陛下からウインザー公に昔贈呈された日本の飾りダンスが2億円あまりで落札されたが、これも個人で入札に参加した1アメリカ人が買ったものだ。
古物だから新品より安いと考えるとえらい目にあうのも西洋の骨董で、例えばハンフリー・ボガードが着用したレインコートとコロンボ警部のコートでは、それが同じバーバリーの物であっても中古価格と価値が異なる。 つまり、作られたレーンコートの数、デザインなどを勘案してオリジナリティーを探求した上で骨董としての価値の設定がおこなわれて行くのである。 勿論、全部の骨董がそうではないが、彼らの目ききには相当の知識を持つ人もいる程だ。
過日、英国の古いリールを頼まれて知人につてを求めた。 新品が100ポンドもせずに買えるものなので法外な骨童価格など眼中に無かった。 しばらくしてから返事が来て、品物は見つかったが、本当に買ってもよいのかとの確認を求められた。 なんと驚いたことに4500ポンド。 たった1個の中古リールがである。 さらに追いうちで3日以内に返事をという。 他にも買手が待っているとの事。 比べたくはないが国産車1台と同値ではと、やむなく引き下がった。(荒井利治)
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