フライフィッシング内緒話 第4回 「白も黒も元は縞々」という話2010/04/24 08:01

フライフィッシングをやり始めて暫くすると、多くの人が手掛けるのがフライタイイングである。 理由は色々あるが、1番の理由は経済的なというのが多い。

初めに揃えるマテリアルはたいていが茶色のハックル、そして次に必ず欲しくなるのが、白と黒の縞々模様のあの有名なグリズリー。 最近はカラーで写真が出ているからだれでもわかるが、英語の辞書と首っ引きでフライを巻いていた頃はブルーダンと共にわからないカラーのひとつだっだ。 灰色グマがなぜハックルになるのか不思議だったしネズミ色がなぜブルーダンというのかも不思議だった。

グリズリーと言う呼び方は世界的にフライマンにしか通用しない呼びかたで、養鶏家にはプリモスロックと言わないとわかってもらえない。

このプリモスロックを子供の頃飼っていたことがある。 当時はこの鳥が最高のハックルになるとは思ってもいなかったし、うちのニワトリはよそのと色が違うとしか思わなかった。 この鳥は白色レグホンと違って、自分で卵を温めるので雛を取ることができた。 生まれた時は白と黒の大きなまだらで、暫くするとウブ毛が生え変って、だんだん縞模様になってくる。 雄は子供の背丈程あり、気性は非常に荒かった。 そんなことがあったので初めてグリズリーを見た時は一目でわかった。

さて、1枚目のグリズリーが残り少なくなって、2枚目を買う頃になると、ハックルを見る目が変って来てグリズリーにも種類があることに気がつく。 縞の幅が狭いのとか、全体がぼけているとかなどである。 そして色の濃い目のグリズリーはブラウンと、薄いのはジンジャーとミックスすることを覚える。

数多くのハックルを見て気がつくのは、1枚として同じ物が無いことである。 さらに次に欲しくなるのがブルーダンやブラックそれにホワイトである。

ところでこれらのハックルが全て同じ親から生まれてくるということを御存じだろうか。 特にホワイトもブラックも同じ親だといえば、まるで黒を白といいくるめるような話になってしまう。 勿論まるっきり同じ親から生まれるわけでは無くてどちらも親はグリズリーを品種改良した鳥だ、といいたいのである。

グリズリーのあの縞は当然遺伝によるものだが、時々遺伝子の突然変異が出る。 縞にする遺伝子が欠落すると白と黒が入りまじってブルーダンになるのが出たりするし、縞を作るのが強くなったり弱くなったりすると、黒になったり白になったりしてしまう。 単純には言えないが、現在ではかなりわかって来ている。 だからグリズリーから作ったホワイトをよく見ると、かすかに縞が見えるし、はなはだしいのは、白とダンが入りまじって、その名もスプラッシュドホワイト(泥がはねた白)というのまである。

さて、グリズリーなら全てハックルに使えるかというと、これはとんでもない話で、現在ハックルとして売られているのは、1羽残らず只フライを巻く為にだけ品種改良され、かつ選別され、飼育された雄鳥ばかりである。

このグリズリーにとりつかれ、自分で品種改良を始めた人がいる。 10年程前から手掛けて、これまで既に1000羽以上の雛をかえしてきている。

先日仙台でフライキャスティングスクールをした時に来られた、デモンストレーターの小平高久氏である。 この話も殆ど彼から聞かせてもらった話である。 今も100羽以上の鳥を飼っていて長期間留守に出来ない生活をしている。 やっと親が出来たら犬にかみ殺されたり、イタチに食われたり、すいぶん苦労したがまだ納得できる物は数が少ないそうである。(三浦剛資)

(「北の釣り」1985年9月号 No.40 P74-75掲載)

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