フライフィッシング内緒話 第6回 「幸福の青い卵」の話 ― 2010/04/24 08:02
フライフィッシングで釣りをしている者にとって毛針は大事な物の一つだが、これを巻いている材料はマテリアルと呼ばれ色々な物が使われている。 鳥の羽根に加えて、狐、イタチ、モグラ、鹿、牛、等の獣毛。 さらに最近では化学的に合成された繊維も使われていて、フライを巻く為の、色取りどりの織維が発売されている。
それでも気に入ったマテリアルや色が揃わない場合には、ありとあらゆる物が使えないかと捜しまくる。 そのうち回りの物、総てがマテリアルに見え始め、ズボンを買いに入った店の試着室のカーペットをむしり取って来たり、飼っている小鳥の羽根をむしったりということになる。 そのあげく釣りに行くよりマテリアルを捜すのに血道を上げることになってしまい、釣れた実績より持っていることの方が値打がある、と言い出す本末転倒も甚だしい者まて現われることとなる。
ここまでならなくともマテリアルというのは、やはりフライマンにとっては大事なことである。
ところで、この世の中に青い卵を産むニワトリがいたらあなたは信じるだろうか。
ドライフライを巻く為に絶対必要な毛、「ハックル」はニワトリの羽根である。
おそらく昔は、そこらにいたニワトリの中からいい羽根を見つけては使っていたのだろうが、世界的にフライマンの数がふえてくるにしたがってハックルが不足してきたのと、自然にはなかなか存在しない色をほしがり始めたので、各種のニワトリをかけあわせては、ハックルを品種改良して造り出すようになった。 改良の対象は当然「羽根」である。 色、サイズ、弾力、長さ、等が対象になるが、鳴き声や肉質はまるで関係ない。 まして親鳥が産む卵の数や色など、どうでもいい話である。
ハックルになるニワトリが、グリズリーだろうが、ブラウンだろうが卵の色が取立てて奇抜な色というのは無い。 元々保護色に出来ているのだから派手な色が着くのがそもそもおかしいので、たいていは白か茶と決っている。
普段店先で見ることが出来るのは白が多いが、受験シーズンになると縁起をかつぐことから茶の卵を多く見掛ける。 近頃は円い物に印刷が簡単に出来るので、日付が入ったり養鶏場の名前が入ったりしているが、その内卵の上にコマーシャルが印刷されるのではないか、とさえ思えてくる。
ハックルは、ニワトリに品種改良を重ねて造り出した産物である。 苦労をいとわず、10年以上の歳月をかけ、只「もう1匹釣りたい」という切なる思いが今日のハックルを造りだしたといってもいいすぎではあるまい。 もしこれが「オレはあいつと違うハックルを持っている」というだけの理由でならここまではならなかっだろう。
今、養鶏業者はたいへんな競争だそうである。 有精卵を売出したり、放し飼いをセールス・ポイントにしたり、少しでも他と違う卵を売り出そうと必死である。 そんな最中に青い卵を産むニワトリが出来てきた。 このチャンスを見逃すはずがない。 業界大手のK養鶏が、マッチ・ザ・フライにライズしてきたヤマメの様に、ぜひゆずってほしいと乗り出して来た。
その後、この鳥はさらに品種改良を加えられ、今では緑の卵を産むニワトリも出来上がっている。 近いうちに我々消費者の前に、青や緑の卵が姿を現わす筈である。
もし、あなたがどこかの店の前で青い卵に出会った時、ぜひ思い出してほしい。
その卵は、あなたに「大漁」という幸福をもたらすハックルが、姿を変えているのだ、と。(三浦剛資)
(「北の釣り」1985年9月号 No.40 P76掲載)
Copyright (c) 三浦剛資, 1985. All rights reserved.
それでも気に入ったマテリアルや色が揃わない場合には、ありとあらゆる物が使えないかと捜しまくる。 そのうち回りの物、総てがマテリアルに見え始め、ズボンを買いに入った店の試着室のカーペットをむしり取って来たり、飼っている小鳥の羽根をむしったりということになる。 そのあげく釣りに行くよりマテリアルを捜すのに血道を上げることになってしまい、釣れた実績より持っていることの方が値打がある、と言い出す本末転倒も甚だしい者まて現われることとなる。
ここまでならなくともマテリアルというのは、やはりフライマンにとっては大事なことである。
ところで、この世の中に青い卵を産むニワトリがいたらあなたは信じるだろうか。
ドライフライを巻く為に絶対必要な毛、「ハックル」はニワトリの羽根である。
おそらく昔は、そこらにいたニワトリの中からいい羽根を見つけては使っていたのだろうが、世界的にフライマンの数がふえてくるにしたがってハックルが不足してきたのと、自然にはなかなか存在しない色をほしがり始めたので、各種のニワトリをかけあわせては、ハックルを品種改良して造り出すようになった。 改良の対象は当然「羽根」である。 色、サイズ、弾力、長さ、等が対象になるが、鳴き声や肉質はまるで関係ない。 まして親鳥が産む卵の数や色など、どうでもいい話である。
ハックルになるニワトリが、グリズリーだろうが、ブラウンだろうが卵の色が取立てて奇抜な色というのは無い。 元々保護色に出来ているのだから派手な色が着くのがそもそもおかしいので、たいていは白か茶と決っている。
普段店先で見ることが出来るのは白が多いが、受験シーズンになると縁起をかつぐことから茶の卵を多く見掛ける。 近頃は円い物に印刷が簡単に出来るので、日付が入ったり養鶏場の名前が入ったりしているが、その内卵の上にコマーシャルが印刷されるのではないか、とさえ思えてくる。
ハックルは、ニワトリに品種改良を重ねて造り出した産物である。 苦労をいとわず、10年以上の歳月をかけ、只「もう1匹釣りたい」という切なる思いが今日のハックルを造りだしたといってもいいすぎではあるまい。 もしこれが「オレはあいつと違うハックルを持っている」というだけの理由でならここまではならなかっだろう。
今、養鶏業者はたいへんな競争だそうである。 有精卵を売出したり、放し飼いをセールス・ポイントにしたり、少しでも他と違う卵を売り出そうと必死である。 そんな最中に青い卵を産むニワトリが出来てきた。 このチャンスを見逃すはずがない。 業界大手のK養鶏が、マッチ・ザ・フライにライズしてきたヤマメの様に、ぜひゆずってほしいと乗り出して来た。
その後、この鳥はさらに品種改良を加えられ、今では緑の卵を産むニワトリも出来上がっている。 近いうちに我々消費者の前に、青や緑の卵が姿を現わす筈である。
もし、あなたがどこかの店の前で青い卵に出会った時、ぜひ思い出してほしい。
その卵は、あなたに「大漁」という幸福をもたらすハックルが、姿を変えているのだ、と。(三浦剛資)
(「北の釣り」1985年9月号 No.40 P76掲載)
Copyright (c) 三浦剛資, 1985. All rights reserved.
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://tightlines.asablo.jp/blog/2010/04/24/5040320/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。