英国やぶにらみ第23話 英国テレビ事情2010/04/22 22:43

日本、特に首都圏に居住していると、テレビは朝の6時から深夜まで、それも数多くのチャンネルがあり、生活にとけこんでいる。 朝のニュースは時報とともにスタートして、アナウンサーは秒きざみで日本そして世界の出来事を伝えるのが普通のスタイル。 朝刊の番組表をみれば何時にどのチャンネルでどんなプログラムがあるか判るし、正確にその時刻がくればスタートする。

英国では、日本のNHKにあたる公共チャンネルとしてBBCに2つの局があり、さらにテームズとITVと呼ばれる民間放送2社があり、ロンドンを始めとしてほとんどの地域で視聴出来る。

まず、BBCであるが、BBC1は総合プログラムを中心としたもので、BBC2は教育、教養番組が主体である。 英国BBCは放送の歴史において、世界の主導とされ、情報源の広さにおいても他の追随をゆるさない程の名門であり、日本のNHKとは深いきずなを特つ閣係にある。

BBCの電波は英国だけではなく、連邦各国にも広くリレーされて東南アジアの諸国にも同時に伝達される程である。

ところが、英国のTV番組は2年程前までは朝の放送がなかった。 午前9時頃から始まる2つの番組は、いずれもオープン・ユニバーシティと呼ばれる教育番組で、ニュース番組などは正午過ぎまで皆無であった。

民間放送のITVは歴史も浅いのでさておくが、テームズ局は民間放送としてすでに10年余の歴史を持ち、コマーシャルも多い。 ところが、こちらも朝のプログラムはなく、昼からの放送であったが、BBCのモーニングショーの開始とともに、ほとんど差がない内容と構成のモーニングショーを関始、民公両放送がしのぎをげずる昨今となった。

NHKの朝のモーニングショーもよく似ているが、30分間隔でその日のニュースのへッドラインを繰り返し、その合間をインタビューや音楽でお茶をにごす。 9時追ぎにはモーニングショーは終り、昔と変わらぬ教育番組が主要チャンネルで始まる。 最近は若干進化して文字多重放送を併用しているチャンネルも見られる。

日本人から見ると何とも間の抜けたプログラム構成と思うのであるが、平均的英国人から見ると、朝からTVにしばられる様な生活様式はなく、全く関心を示さない。 亭主は朝の7時はべッドの上でコーヒーか紅茶を飲み、かみさんがベーコンエッグとカリカリトーストを作る間に朝刊を買い求めて、食事の時は新聞はやめなさいと毎日同じ小言を聞き乍ら、朝食はすますものなのである。

かたやサッチャーさんの悪ロ、配管工事のドジな仕上げのグチ、来週のパーティーの洋服選びの事など、とめどないカミさんの話題で英国の朝にTVなどの入り込む余地がありますか。

この辺の事情を各放送局は先刻承知で、視聴率などはなから計算済み。 それでは世界のトップの情報源はどう処理しているかというと、実はモーニングショーで同時に放送しているのである。

英国では文字多重放送システムが非常にすすんでいて、モーニングショーの電波にこのシステムを組みこんでいる。 視聴者側で特殊なアダプターをTVにセットしてリモコン操作により得たい情報を即座に画面に引き出せる。 世界の出来事を始めとして、飛行機のスケジュール、鉄道の予約、運行状況、株式市況、道路情報など驚く程多岐に亘るニュースが一瞬に得られるシステムが存在している。

TVをみごとなまでに個人個人に対応させている訳で、日本の様に全てが同じニュースで過ごすことは無い。 主要文字多重番組は24時間常に最新情報が投入される。

番組の構成についても実にユニークというか、フレキシブルな運用で、新聞に掲載されている番組表の通りに放送が始まるとは限らない。

ニュースが多ければ時間が延長されるのは当然の様で、新間に出ている時刻はおおよそのメドと思った方がよい。 7時のニュースが7時4分から始まったりするが、誰も不思議に思わない。

BBCの番組では、コマーシャルがない代わりに、BBCのマークと地球儀が回る。 正時に近いと地球儀に代わって時計が出てくるが、別に時報の為ではなく、今の時刻と云う訳でテロップに次の番組は間もなく始まると出るだけ。

テームズ局のコマーシャルも日本の様に5秒、15秒といった小刻みではなく、1分もあろうかと思われるCMを流す。 但し、日本の様にCMの時に放送局側で音量を上げないので日本ほど耳ざわりではないし、英国人の好みや食品の種類など判って、異国の者にとって大変参考になる。

ギャンブル好きの国民だけに週末の競馬中継がすごい。 多いときには5~6ヶ所の馬場から多元中継で結果が逐一発表され、まるで競馬TVの感を呈す。 中継番組となると最後まで放送するのが原則なのか、珍らしくウィンブルドンに雷鳴が轟き試合は中断、1時間も延々と雨のテニスコートを写すBBCのTVを見た。 融通のなさに驚いては英国知らずというもので、彼らにはNHKの様に《名曲アルバム》などの代替番組の用意は無いのが普通というもの。(荒井利治)

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