英国やぶにらみ第28話 週休三日制?の効用2010/04/22 22:46

日本人相手のロンドンの土産物屋とか、繁華街の一部と駅のキオスク以外、店舗やデパートそしてスーパーマーケットまで、日曜日は全部休んでしまう英国では、一般の主婦ならともかく、サラリーマンなどは、普通真面目に働いていてはショッピングは出来ない事になる。

地方の工場などは、この為に始業を7時30分、終業時間を3時30分として、6時におわるスーパーへの買物時間を見込んでいるケースも多い。 女性も多く就労している現状から、大変合理的と云える。 しかし、ロンドンなどの大都会ともなると、就業時間を勝手に変更も出来ないので、社員同士で時間をやりくりしたり、昼食時間にショッピングを組み込んだりしている様だ。

過去の実績を調べてみて面白い事に気付いた。 英国では対人関係の面談の手段として必ず事前に約束を取り、当日秘書に確認させて会見となるのが普通であるが、月、火、水の3日間が断然多いのである。 マネージャークラスとの約束は木曜日でもなんとかなるが、偉いさんとの木、金曜日のアポイントメントを取り付ける事は至難のわざである。

感ぐるに、英国式では週明けの3日間に1週間の面談をすませ、木曜日には書類の整理などに費やして、夕方早めに仕事を切りあげてデパートなどに買物にでかけるのがノーマルスタイル。 この日に限って大手のデパートや商店は、終業時刻を夜7時か8時迄延長するからである。

金曜日ともなると、重役連中は大事がなければ秘書と連絡を取るだけで、郊外の別荘にカントリージャケットを1着、さっさと出かけてしまう。 ロールスロイスは一斉に郊外をめざすのである。 中堅幹部も仕事は上の空、ストックマーケットがはねる時刻までには夕食のテーブルの予約をすませ、ツバをつけた秘書のお尻を想像するだけとなるから、東洋の野郎との面談など論外だ。

地方から来た連中も、月火水をロンドンのホテルで過ごし、仕事を了えると脱兎のごとくロンドンをあとにする。 列車の揺れに身をまかせ、出張費の計算が終れば、あとはワインに酔いながらのご帰還である。 駅前に止めておいた車を確認して、見る度にそろそろ買換えなければと一瞬思ったりしながら、酒酔運転で家路につくのが木曜日の夜というもの。

したがって、ロンドンを始めとして英国の主要都市では、木金土日のホテル客数が月火水といちじるしく変化をきたす。 週明け満員だったホテルも、木曜日となるとガラガラという訳だ。

商売である以上、ホテルとしても客を確保したいのは当然で、ビジネスマン以外を対象として、格安レートを設定して集客を図っている。 名付けてウイークエンドバーゲンなどがそれで、うまく利用するとビックリする値段で一流ホテルに宿泊出来るし、勿論、出かける前に日本で予約が出来る。

例えば、1泊シングルでロンドンの一流クラスとなると70ポンドぐらいする。 ところが、木曜日から4泊して月曜日の朝チェックアウトするウイークエンドバーゲンでは合計120ポンド、つまり1泊30ポンドである。 そのうえに英国式の朝食が毎日つき、目覚ましのコーヒーまでサービスしてくれて、土曜日の黄昏時には、支配人からシャンバンの振舞いまであった。

日本から年聞50万人ちかい人々が訪英するが、その中には多くの個人ビジネスマンもいるはずで、ロンドンのホテルの高いのに困っていると思うのだが、ほとんどこの格安レートは知らない様で、泊りあわせた日本人は1日70ポンドを払って、週末のロンドンでわびしく過ごしている。

団体客については当然割引レートがあり、また無理な事であるが、日本からの個人客を見ていると、全て会社まかせの人と、ホテルのパンフレットなどに興味を持たず、幹旋業者の言いなりで予約している人だらけで、日本人は裕福だと感心する。

その点、アメリカをはじめとして欧州の人々は、ショッピングのバーゲンだけではなく、ホテルの格安料金などについてもよく研究して旅行している。 そして1泊半の金額で4泊出来るならと、ゆとりのある旅程を組むのが一般である。 ビジネスだからといって1泊基調の日本人型は、そろそろ終りにして--同胞諸君--。 たまにはゆったりロンドン見物といこうではないか。

ちなみにこの週末バーゲンは最近の事ではなく、知る限りにおいて何10年と続いているサービスで、詳細なパンフレットは英文ながら日本でも手にいれる事が出来る。

また、英国におけるビジネスとは、月曜日から木曜日までと理解して以来、こちら側も英国流にアポイントがスムーズに採れるようになった事は云うまでもないが、余暇の利用で英国の見聞を深めることに大いに役立っている。 さらに、ホテルはビジネス客が少ないせいか、ボーイなどまでが顔馴染みとなって、安い料金の時の方がサービスもよい。 バーのピアニストは既に小生の好きな曲も憶えてくれた。(荒井利治)

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