英国やぶにらみ第29話 逆説的安全旅行2010/04/22 22:48

先般、ロンドンのヒースロー空港で、日本人のトランクを専門にねらった窃盗犯のグループが、約70人逮捕された新聞記事を見掛けたが、さようにまで日本人がねらわれる原因はなにか。 年間400万人以上の海外旅行者がいるのであるから研究してよいのではないか。

まず一番にあげられるのが同一スタイル、同一サイズのトランクである。 色こそ違っていても、空港でも判別がしにくいものが多く、自分のトランクを捜し回る日本人が目につく。 その上始末におえないのが、団体旅行に見られるグループツアー会社のドでかい名礼である。 本来ツアー会社が、自分の受持つ団体の荷物の認識の為に付けているのであるが、窃盗する側にすれば、これは盗み易いトランクの目印でもある。

日本の成田空港は設備最新で、荷物を返すベルトコンベアーの距離が短い点で最高。 中間で積みかえなどの必要がなく、人為による中間窃取が出来ない。 しかし、ロンドン・ヒースローの様な拡張、拡張の繰返しで肥大したターミナルでは、航空機から下ろしてから、何度もベルトコンベアーを中継して乗客の待つロビーに出てくる。 その為に中継地点では安易に、グループ化した窃盗犯の暗躍を許す事に繋がっている。

薄暗いベルトコンベアーに乗って運ばれてくる多くの荷物の中で、金目のトランクとして検知しやすいのは、当然大きい名礼と鍵のしっかり付いた日本人の荷物で、最大の目標となるのは当然。 彼らは、日本人が鍵と錠に対して異常なまでに信頼を托していて、貴重品や現金までトランクに入れてしまう弱点を先刻承知で、連中にかかれば電子ロックでも平気で解錠してしまう。

元来、欧米の人々が旅具に施錠するのは、蓋が開かない様にする事と、私物にさわるなといった意思表示でしかなく、錠を信頼していない。

東京新橋にあるホリ鍵店の権威の言だが、日本人ほど錠と鍵の区別が出来ない民族は世界で珍しいそうだ。 ちょっとした錠ひとつに全幅の信頼をおいて安全と思い込む。 しかし錠と鍵は開かなければ意味がない事に、以外と無頓着だそうだ。

過去10余年にわたり、ヒースロー空港に幾度となく世話になっているが、この間、一度も盗難や航空会社に預けた荷物で被害を受けた経験はないが、若干逆手を取った工夫をして、窃盗にあわない方法をとっている。

まず、絶対にハードトランクを使わない。 素材の柔らかいソフトトランクを利用する。 邦人でソフト利用者は少なく、万一荷抜きなどがあればふくらみなどが変わるので、地上職員に即刻通報出来る。

ジャルパックなどの団体旅行らしき名札は全て除去し、逆に空港で手に入る2~3社の航空会社名だけのタグをハンドルなどに付けて、回数旅行者の荷物と印象ずけをする。 錠は出来るだけ付けないで、カバンにある簡易錠前程度しかしない。 間違ってもトランク業者が推薦するベルトなど別につけてはいけない。 預ける荷物は、できれば日本製以外のものを使うと被害が少ない様で、ツルのマークや日章旗のシールなどはダメ。 さらに予防として、ハワイやグアムのシールを貼って英国入りはやめた方が得策。 英国のドロボーは、一目で日本人の旅具と判別する。 ハワイの米国人はJALではこない。

絶対多数として団体旅行人数が多い日本の現状を直視する時、ツアー会社は新しい識別手段を配慮すべきで、即刻、マーク入りの名札ケースはやめてほしいし、添乗員は、不用の際は出来る限り名札をトランクなどからはずす事期を指導すべきではないか。

最近ではロンドンなどでもさすがにJALのマークのショルダーバッグを背員った一団に出会わなくなってきているが、ホテルのロビーでも、店のショーケースの上でも、日本人はやたら手荷物を置いたまま悠然としている。 さらにバッグのチャックが開いたままの風景をよく見掛けるが、なんど教えても直らない。

ルックやジャルパックのバッジをやたら胸につけ、両手に買物袋で、チャックを開けたままでは泥棒を誘発するはずで、日本語だけで海外旅行が出来る制度が定着してきて、ピカデリーを歩いていても用心は筑波万博と同じ感覚とはなさけない。

ロンドンではターミナル駅がそれぞれの目的地向けに別れている。 地方からロンドンにつくとまず、タクシーの世話になるケースが普通で、乗り場は行列となる。 どこからくるのか悪ガキが数人、必ず行列の先頭付近にたむろしていて、タクシーに乗り込むひとの荷物を持ってやったり、ドアを開閉してなにがしかのチップを得ている。 よく見ているとこの連中、全部の人々に同じ様にはしておらず、チップを呉れそうな客をボスらしきガキが選別している。

イギリス人にはまず何もしないが、スコットランドあたりからの田舎者と判るとサービス開始、日本人や韓国人、そして子供連れなどは絶好のカモで、チップが確実らしい。 反対に米国人と中国人は以外とケチと判別してか、米国からの旅行者とみると、よそ見などして知らんふり。 次第に小生の順番が近ずき、ボスガキがカバンを一瞥して子分によそ見を指示した。 カバンには英国航空以外の名礼はなく、ロンドン在住の中国人と聞違えられたらしい。

逆説めくが、今や日本人に見られないことが安全の秘訣?。(荒井利治)

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